不動産を購入すると、建物にあわせて土地も購入することになります。これは賃貸とは大きく異なる点です。
土地を購入すると固定資産税や都市計画税がかかってくるので、所有者には大きな負担となってきます。
しかし、全ての不動産に固定資産税がかかるわけではありません。それは所有権か定期借地権かによって異なります。
この機会に土地の権利、所有権と定期借地権の違いについて理解しておきましょう。
所有権と定期借地権の違い
土地の権利には大きく分けて①所有権と②定期借地権があります。
所有権とは?
所有権とは、土地を所有する権利のことを言います。不動産を購入し、売買契約が完了すると、その土地は購入者の所有物となります。
土地所有者になると税金を納める必要があり、固定資産税、都市計画税がかかります。その後は売却しようと、賃貸で貸出しようと何に使っても自由になります。
賃貸で貸し出しする場合は、所有権はまだ自分にあり税金を支払い続ける必要があるので、その分を賃貸料に上乗せする形になります。
ほとんどのマンションはこの「所有権」にあたります。固定資産税については下の記事をあわせて読んでみてください▼
借地権とは?
所有権ともう一つあるのが「借地権」です。
定期借地権とは、その土地の所有者(地主)から土地を借りて、そこに建物を建てることを言います。
建物は自分のものですが、土地は地主のものという権利になります。
土地を使わせてもらっているので、毎月「地代」を地主に支払う必要があります。
借地権にはいくつか種類があります。昔は借主の権利が強い「旧法借地権」でしたが、今は一定期間のみ土地を使える「定期借地権」が主流です。
借地期間が30年という「普通借地権」というのもあります。建物が存続している限り、借地契約が原則更新されますが、借地期間が50年という「定期借地権」の方が一般的です。
定期借地権は1992年からスタートしているので、まだ誰も満了になった方はいません。
所有権と定期借地権の違い
所有権と定期借地権の違いを表にしてみました。
所有権 | 定期借地権 | |
土地の売却・贈与 | 自由にできる | できない |
建物の売却 | 自由にできる | 地主の承諾が必要 |
建物の増改築 | 可能 | 可能 |
固定資産税・都市計画税 | 納付義務あり | 支払う必要がない |
登録免許税・不動産取得税 | 納付義務あり | 支払う必要がない |
地代・更新料・譲渡承諾料 | 不要 | 必要 |
所有権は建物と土地の所有者が同じになります。また定期借地権は建物と所有者が異なります。
本人が土地を所有していれば、自由に売却増改築ができますが、借地している場合はそれができません。建物の売却には地主の承諾が必要です。
定期借地権のメリット・デメリット
定期借地権は、借地権と違って、定められた契約期間でその借地関係が終了します。借地期間は50年とする場合が一般的で、原則契約を延長することはできません。
ただ、50年間はその土地で暮らせますし、建物の増改築や建て替え、リフォームは自由にできます。また、建物の売却も地主の承諾があれば可能です。一世代限定といったイメージです。
所有権と違い、毎月「地代」を地主に支払う必要がありますが、固定資産税や都市計画税を支払う必要はありません。
定期借地権のメリット
定期借地権の最大のメリットと言えば、所有権の物件より価格が安いという点です。所有権の相場と比較すると7~8割程度になります。
借地ではありますが50年というほぼ永住に近いかたちで所有権の約60%ぐらいの価格で取得できるのです。
ただし、20代で購入した場合、50年後は70歳ぐらいになるので、その後を考えておく必要があります。
- 所有権の物件より価格が安いこと
- 固定資産税と都市計画税を納付する必要が無いこと
借地権も権利になるので、基本的に他の人に売却することが可能です。
子供にその家を引き継ぐ予定がないのであればお得に購入することができます。
定期借地権のデメリット
定期借地権のデメリットと言えば、固定資産税や都市計画税を支払う必要が無い分、毎月数万円の「地代」を支払う必要があります。
地代はマンションの場合は数千円~2万円、一戸建ての場合1万円~4万円ぐらいになります。
また、借地になるので子供や子孫に相続したり、贈与することができません。
その他、所有者の物件より土地を担保にできないので、住宅ローンの審査が厳しくなるという点もあります。また途中で受託ローンの借り換えをしたくても難しいという問題もあります。
50年後には土地を地主に返還する必要があり、その時は更地の状態で返さなければなりません(一戸建ての場合)。その時には建物を取り壊す費用が発生します。
- 所有者に毎月「地代」、更新料、譲渡承諾料を支払う必要があること
- 土地を返還する時に更地にする必要があること
- 土地や建物を相続・贈与対象にできないこと
- 住宅ローンの借り換えが難しいこと
- 基本的に何かする時に地主の許可が必要になる
最近はマンションでも定期借地権が増えている
最近は定期借地権のマンションが増えてきています。一見すると「安い!」と思うことがあるかもしれませんが、チラシやスーモなどに小さく借地権と書かれています。
先日、定期借地権のマンションが載っていました。その詳細を見てみましょう。
- 敷地の権利形態:借地権の純共有
- 一般定期借地権、賃借権、借地権の期間:西暦2076年11月30日
- 期間満了時に借地を更地に戻して返還することが条件
- 建物の買取請求、契約更新、改築などによる期間延長は一切できません
- 借地権の譲渡・転賃可(転賃主通知要)
- 賃料改定は3年ごとに改定、改定後賃料は公式による
上で紹介した内容を理解していると、このマンション一例の定期借地権についてよくわかりますね。
2016年のマンションなので60年後の2076年に更地にして返還すると書かれています。これは50年ではなく60年の定期となっています。
このように定期借地権のマンションが増えています。先日は一部所有権で、一部が定期借地権のマンションを見かけました。これはややこしいですね。
このように安いマンションだと喜んでいると、このような定期借地権だということもあるので、必ず詳細、特に小さく書かれているところまでチェックしてみて下さい。